ushikunaomi’s blog

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言葉って怖いと思ったことがあった

言葉って怖いと思ったことがあった。
何かを言葉にした時、言葉にした以外のことがするすると抜け落ちていってしまって、こぼれ落ちて、もうもとには戻らないところに永遠に溜まっていくのではないかと思えた。だったら、言葉にした以外のことを、いまここに存在させるためにこぼれ落ちないように何もかも書き留めておかねばならない。もしくは、だったら、言葉にしない方がいい。

 

 

似たような言葉に対する不信をもってる画家がいたことを知った。絵を描く人には良くある話なのかもしれないと思えた。

 

 

「風穴をあける」谷川俊太郎(角川文庫)のなかで谷川俊太郎香月泰男という画家についてかいている。

香月泰男は著書の中でこう書いていた。
「私の絵と言葉とは真反対なことを申しているかも知れませんが、その時は絵の方が本当で文章の方がうそごとなのです」

 

 

そして谷川俊太郎香月泰男についてこう書く。
「しかしまた、もし絵と反対なら文章の方が「うそごと」なのだという言い方、私は香月さんの言葉に対する厳しさ不信をもみます。言葉に偽られることを嫌ったからこそ、香月さんは絵を描き続けたのではないかとさえ私は思います。」

 

 

言葉はすべての事象を言い表せないし、時々、偽りを発生させる。
ある著者の著作を全て読んだからといって、その人の考え方を知ることはできない。
たくさんの愛についての著作を残し、愛について語り、世の中を動かした作家が、同じ屋根の下の家族に対して、愛情深く接していたかどうかは、

 

あやしい。

 

そして、小説家は何万語もの言葉を尽くして、言葉にできないものを表現しているのかもしれない、と気づいたのは随分歳をとってからだった。